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  • カンボジア建築法とソフトタイトルの今後_2026年9月版

    2026.09.23

    カンボジアの建築法はどう変わる?日本企業による制度支援とソフトタイトルの今後を2026年最新情報で解説

    カンボジアでは建築制度と土地登記の整備が同時に進んでいます

    カンボジアでは現在、建物の安全性を高めるための建設法・建築認証・許可制度と、土地の権利関係を明確にする全国的な土地登記が同時に進められています。

    2026年9月10日には、カンボジア王国国土管理・都市計画・建設省と日系企業のURATA(CAMBODIA)CO., LTD.が、「建設法及び建築認証・許可制度に関する理解促進セミナー」を共同開催しました。
    くわしくはこちらから
    また、カンボジア政府は、2026年末までに全国の土地測量・登記を進め、2027年末までに土地所有権証明書の交付を完了する方針を示しています。

    この動きを見ると、

    「カンボジアの不動産制度が日本のように整備され、ソフトタイトルもすべてハードタイトルになるのではないか」

    「日本企業が制度づくりに関わることで、カンボジア不動産は安全になるのではないか」

    と考える方もいるでしょう。

    しかし、ここで注意しなければならないのは、建物の安全や建築許可を扱う制度と、土地の所有権を登録する制度は別の制度だということです。

    日本による建設法・建築行政への協力が、そのままソフトタイトルをハードタイトルへ変更するわけではありません。

    一方で、建築許可、建築確認、使用許可、地籍情報、土地利用計画、土地登記が徐々に連携していくことで、カンボジア不動産市場全体の透明性と信頼性が高まる可能性はあります。

    この記事では、カンボジアの建築法整備に日本がどのように関わってきたのか、2026年に何が変わったのか、そしてソフトタイトルが今後どうなっていくと考えられるのかを詳しく解説します。

    この記事の結論|建築制度と土地登記は別々に確認する必要があります

    2026年9月現在の結論は、次のとおりです。

    • カンボジアでは2019年に建設法が制定され、建築許可、検査、認証、使用許可の制度整備が続いている
    • 日本の国土交通省、JICA、日本企業は、制度設計、人材育成、建築確認、施工品質管理などを支援している
    • 2026年9月には、カンボジア政府とURATA(CAMBODIA)が450人を超える規模の建設法セミナーを開催した
    • 2026年2月には、建築許可と使用許可の手続を明確化する新しいガイドラインが施行された
    • 土地については、カンボジア政府が全国的な測量・登記と権利証交付を加速している
    • ソフトタイトルは、全国登記が進むにつれてハードタイトルへ整理されていく方向にある
    • ただし、ソフトタイトルが自動的にハードタイトルへ変更されるわけではない
    • 境界争い、重複書類、国有地との重なり、税金、建築許可の欠如などがある物件は、登記が遅れる可能性がある
    • 日本企業による建築制度支援は市場全体の信頼性向上につながるが、個別物件の権利を保証するものではない

    カンボジア不動産を購入する場合は、「土地の権利」と「建物の適法性」を分けて確認することが重要です。

    「カンボジアの建築法」は正式には「建設法」と呼ばれています

    日本語では「カンボジアの建築法」と検索されることが多いのですが、制度の中心となる法律は、2019年11月2日に公布されたLaw on Construction、日本語では一般に「建設法」と呼ばれる法律です。

    この法律は、建物を建てるときの許可だけを定めたものではありません。

    カンボジアの建設法では、主に次のような分野が対象となっています。

    • 建築技術基準
    • 構造安全や防火に関する基準
    • 設計者、技術者、建設事業者などの資格と責任
    • 建設材料、設備、製品、試験機関
    • 新築、改修、増築、用途変更、解体の許可
    • 設計図書の作成と管理
    • 建設工事中の確認と検査
    • 建物完成後の使用許可
    • 危険建築物への対応
    • 建設契約と保険
    • 事故や欠陥が発生した場合の責任
    • 建設紛争の解決と罰則

    つまりカンボジアの建設法は、誰が設計し、誰が施工し、誰が検査し、どのような状態で建物を使用できるのかを整えるための基本法です。

    なぜカンボジアでは建築法・建設法の整備が必要だったのか

    カンボジアでは、経済成長と都市化により、プノンペンを中心にコンドミニアム、ホテル、オフィス、工場、商業施設、住宅開発が急速に増加しました。

    その一方で、建物の構造安全、防火、施工品質、専門家の資格、完成後の検査について、全国で統一された制度や運用が十分に定着していないという課題がありました。

    日本の国土交通省が公表したカンボジアの建築基準規制に関する調査では、構造安全基準や防火安全基準の整備、審査を行う行政機関の体制、専門技術者の責任、建築認証制度の運用などが課題として整理されています。

    建物の安全性を確保するには、法律を作るだけでは不十分です。

    建築確認を行う行政職員、設計図を審査する技術者、現場を検査する認証機関、構造や材料を試験する機関、制度を理解して申請する設計者・施工者が必要です。

    さらに、地方の行政機関まで同じ制度を理解し、継続的に運用できなければなりません。

    そのため、現在のカンボジアは、建設法を制定する段階から、法律を実際の建設現場で運用する段階へ移っていると考えられます。

    日本はカンボジアの建設法整備にどのように関わってきたのか

    日本による支援は、2026年に突然始まったものではありません。

    日本の国土交通省、JICA、在カンボジア日本国大使館、関連機関、日本企業などは、長期間にわたり、建設業制度、品質管理、技術者制度、建築確認・検査、人材育成に関する知見をカンボジア側と共有してきました。

    日本とカンボジアによる安全・品質管理セミナー

    日本とカンボジアは、建設工事の安全管理と品質管理をテーマにしたセミナーを複数回開催しています。

    道路や橋梁などのインフラ整備を進めるうえで、完成後の耐久性を高め、維持管理費を抑えるためには、施工中の品質管理が欠かせません。

    JICAは2009年5月から2012年10月まで、カンボジアの公共事業運輸省を対象に「建設の品質管理強化プロジェクト」を実施しました。

    このプロジェクトでは、道路や橋梁の品質管理・保証システムを構築し、カンボジア側が自ら品質管理を行えるよう支援しています。

    2015年に日本の建設業許可制度と技術者制度を紹介

    2015年6月、国土交通省とカンボジア国土整備・都市化・建設省は、プノンペンで「建設業関連制度セミナー」を共同開催しました。

    日本側からは、日本の建設業許可制度と技術者制度について説明が行われました。

    カンボジア側からは、次のような点について多数の質問が寄せられています。

    • 建設業許可の対象となる業種
    • 建設会社の審査方法
    • 許可申請の実務
    • 技術者に求める資格と経験
    • 技術者の教育方法
    • 建設会社に配置する責任者

    当時、カンボジアでは建設法が起草中であり、カンボジア側からは、セミナーで得た知識を建設法の整備へ活用したいとの発言がありました。

    建設法案の条文に基づいた具体的な意見交換

    2015年11月には、カンボジア政府の要請を受けて「建設法案に関する意見交換会」が開催されました。

    日本側は、カンボジア政府が起草していた建設法案の条文に合わせ、日本の建設業法や建築基準法に基づく制度を説明しました。

    主な内容は次のとおりです。

    • 建設業者の許可制度
    • 建設技術者の資格制度
    • 建築確認と中間・完了検査
    • 建築士などの専門資格
    • 工事監理と施工責任
    • 既存建築物への対応

    カンボジア側からは、既存不適格の建築物が多いことや、制度を運用する人材が不足していることを踏まえた助言が求められました。

    日本は法律の文章だけでなく、制度を実際に動かすための行政、資格、検査、工事監理の仕組みまで共有してきたことが分かります。

    政府間の協力覚書と官民プラットフォーム

    2017年には、日本の国土交通省とカンボジア国土整備・都市計画・建設省との間で、包括的な協力覚書が締結されました。

    2019年には「日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム」が設立され、日本政府、カンボジア政府、関係機関、民間企業が、都市開発や不動産開発に関する課題を共有する枠組みが作られました。

    2021年の会合では、カンボジア側から、日本へ次のような支援が要請されています。

    • 建設法を適切に運用するための人材育成
    • 国立建設試験所への支援
    • 国土空間計画の整備
    • 都市計画の策定
    • 地理空間情報の活用
    • 住宅分野の法律や政策の策定

    この流れからも、日本の協力が日本企業の事業進出だけを目的とするものではなく、カンボジアの行政能力と不動産市場の基盤を整える制度協力として進められていることが分かります。

    2026年5月|カンボジア政府関係者が日本の建築確認・検査制度を視察

    2026年5月には、JICAの「建設法施行・建設技術基準整備アドバイザー」に関する第1回日本視察が行われました。

    株式会社ウラタは、この視察の中で、プレゼンテーションと施工現場の見学プログラムに協力しています。

    プレゼンテーションでは、次のような内容が共有されました。

    • 日本で建設法制度が整備されてきた背景
    • 法制度が建物の安全性と市場の信頼性へ与える影響
    • 法整備と外国投資の関係
    • カンボジアで制度を運用する際の実務的な課題
    • 制度と建設現場をつなぐための考え方

    施工現場では、品質管理、検査の流れ、チェックリスト、確認項目、現場管理の方法などが紹介されました。

    法律の条文を学ぶだけでなく、日本の施工現場で、どの段階に何を確認し、どのように記録し、誰の責任で判断するのかを学ぶ機会になったと考えられます。

    カンボジアの建築制度にとって今後重要になるのは、法律を作ること以上に、制度と実際の建設現場を結び付けることです。

    2026年9月|カンボジア政府と日本企業が大規模な建設法セミナーを開催

    2026年9月10日、カンボジア王国国土管理・都市計画・建設省の本部で、「建設法及び建築認証・許可制度に関する理解促進セミナー」が開催されました。

    共同主催は、同省と、株式会社ウラタのカンボジア現地法人であるURATA(CAMBODIA)CO., LTD.です。

    セミナーには、次のような関係者が参加しました。

    • カンボジアのサイ・サムアル副首相兼国土管理・都市計画・建設大臣
    • カンボジア建設総局長
    • 国土管理・都市計画・建設省の幹部と職員
    • 在カンボジア日本国大使館
    • JICA
    • JETRO
    • カンボジア日本人商工会
    • 建設会社
    • 不動産事業者
    • 建築・技術関係者

    参加者は450人を超える規模となりました。

    カンボジア側からは、建築認証・許可制度の現状と今後の方向性が説明されました。

    URATA(CAMBODIA)からは、カンボジア建設法を実際に適用する中で得た経験、日本の建築行政、建築確認・検査制度、カンボジアでの認証業務の実績などが共有されました。

    ウラタは、外資系企業として初めてカンボジアで建築認証機関ライセンスの発行を受けた企業と説明しています。

    これは、日本企業がカンボジアで建物を建設するだけでなく、カンボジアの建築安全を支える認証制度の運用にも関わり始めていることを示しています。

    2026年には建築許可と使用許可の手続も明確化されました

    カンボジア国土管理・都市計画・建設省は、2026年2月4日付で、建築許可と使用許可証の発行手続に関するガイドラインNo.291を施行しました。

    このガイドラインでは、申請書類が各担当部門へ送られるまでの日数や、地籍情報、都市計画、住宅政策、建築内容を確認する期間が具体的に示されています。

    大規模建築物の申請では、主に次の部門が審査へ関係します。

    • 建設総局
    • 国土管理・都市計画総局
    • 住宅総局
    • 地籍・地理総局
    • 行政総局

    地籍情報、都市計画、住宅政策、建築内容に関する審査を並行して進めることで、建築許可までの行政手続を、おおむね45営業日程度に整理する仕組みが示されました。

    ただし、この日数には大臣が最終決定を行う期間は含まれていません。

    また、建物が完成した後は、実際に建物を使用したり、店舗や工場を営業したりする前に、使用許可証を取得することが求められます。

    建築許可は「この計画で建ててもよい」という許可であり、使用許可は「完成した建物を使用してもよい」という確認です。

    この二つが明確に運用されるようになれば、次のような点を判断しやすくなります。

    • 承認された図面どおりに施工されているか
    • 構造や設備に問題がないか
    • 建物の用途に適した状態になっているか
    • 必要な検査と認証が行われているか
    • 完成した建物を安全に使用できるか

    日本の協力でカンボジア不動産は安全になるのか

    日本の制度や技術が共有されることは、カンボジアの建築物の安全性や不動産市場の信頼性を高めるうえでプラスです。

    特に、次のような効果が期待されます。

    • 建築許可の審査基準と手続が分かりやすくなる
    • 設計者、施工者、検査者の責任分担が明確になる
    • 施工中の検査と記録が重視される
    • 完成後の使用許可制度が定着する
    • 建設材料や構造の品質確認が進む
    • 違法建築や危険建築物への対応が強化される
    • 投資家や金融機関が建物の適法性を判断しやすくなる
    • 適切に建設された建物と、許可や検査が不十分な建物の違いが明確になる

    ただし、セミナーが開催されたからといって、すべての建物が直ちに日本と同じ基準になるわけではありません。

    技術基準の策定、地方行政への普及、技術者の育成、検査機関の能力向上、既存建物への対応、違反時の執行などには時間がかかります。

    制度があることと、すべての物件で制度が正しく運用されていることは別です。

    カンボジアの不動産を購入する場合は、制度整備の方向性を評価しつつ、個別物件について建築許可、着工許可、設計図、検査記録、使用許可証などを確認する必要があります。

    ソフトタイトルとは何か

    カンボジアの不動産では、「ソフトタイトル」と「ハードタイトル」という言葉がよく使われます。

    ソフトタイトルとは一般に、コミューンやサンカットなどの地方自治体が、申請者による土地の占有を証明した書面や、当事者間の占有権譲渡契約を地方自治体が認証した書面を指します。

    ソフトタイトルにはさまざまな形式があります。

    重要なのは、国土管理・都市計画・建設省が管理する国家レベルの登記簿へ正式に登録された所有権証ではないという点です。

    一方、ハードタイトルは、国土管理・都市計画・建設省の管轄下にある登記機関で、正式に登録された土地所有権を示します。

    比較項目ソフトタイトルハードタイトル
    登録機関主にコミューンやサンカットなどの地方自治体国の地籍・登記機関
    示す内容占有や地域での権利認識を示す資料国家登記簿に登録された所有権
    境界測量正式な測量が十分でない場合がある測量と境界確認を経て登録される
    権利の安全性重複発行や第三者の権利主張に注意が必要ソフトタイトルより高い
    紛争リスク比較的高い相対的に低い
    担保評価金融機関が慎重になる場合がある担保として評価されやすい
    売却買主による詳細な調査が必要権利確認を行いやすい

    ソフトタイトルだから直ちに無効という意味ではありません。

    地域によっては、ソフトタイトルを使った売買が長期間行われ、事実上の権利資料として扱われています。

    しかし、ハードタイトルと比較すると、境界、名義、抵当権、重複書類、国有地との重なりなどを確認するための調査が、より重要になります。

    ソフトタイトルは今後どうなっていくのか

    今後は、全国的な土地測量と体系的土地登記が進む地域から、ソフトタイトルを中心とした権利確認から、国家登記されたハードタイトルを中心とする制度へ移行していくと考えられます。

    カンボジア政府は、村や地域単位で土地を測量し、境界と権利者を確認して登記する「体系的土地登記」を進めています。

    2026年7月29日にカンボジア政府系通信社AKPが報じた内容によると、フン・マネット首相は、2026年末までに全国の土地測量と登記を完了し、2027年までに国民への土地権利証の配布を終えるよう関係機関へ指示しました。

    同時点までの進捗として、次の数字が公表されています。

    • 測量された土地:約13,956,479区画
    • 発行された権利証:約9,641,857件
    • 国民へ配布された土地所有権証明書:約8,765,419件

    さらに2026年8月の首相発言では、測量済み区画は約1,400万区画、発行済みタイトルは約1,000万件、配布済み証明書は全区画の約86%に達したと説明されています。

    これらの数字から、土地登記が政策上の目標だけではなく、実際に大規模に進められていることが分かります。

    ソフトタイトルが自動的にハードタイトルになるわけではありません

    全国登記が進んでいるからといって、ソフトタイトルを持っている人が何もせずに、自動的にハードタイトルを受け取れるとは限りません。

    体系的土地登記では、一般に次のような確認が行われます。

    1. 土地の位置を確認します
      対象となる土地が実際にどこにあるのかを特定します。
    2. 土地の境界を測量します
      隣接する土地との境界線や土地面積を確認します。
    3. 占有者と権利を主張する人を確認します
      誰が土地を使用し、誰が所有権を主張しているのかを調査します。
    4. 過去の書類と権利移転の経緯を確認します
      売買、贈与、相続などの経緯を確認します。
    5. 国有地や公共用地との重なりを確認します
      道路、河川、森林、保護区域、公共施設用地などと重なっていないか確認します。
    6. 権利情報を公開します
      一定期間、内容を公開し、第三者が異議を申し立てる機会を設けます。
    7. 紛争がなければ国家登記簿へ登録します
      最終的に所有権を登録し、権利証を発行します。

    ソフトタイトルに記載された面積と実測面積が違う場合や、隣地所有者との境界争いがある場合、同じ土地について複数の書類がある場合、国有地や道路予定地と重なっている場合は、登記前に問題を解決する必要があります。

    ソフトタイトルからハードタイトルへの移行は、単なる紙の交換ではなく、土地の位置、境界、権利者を確定する手続です。

    政府による体系的登記を待たずに個別申請する方法もあります

    政府が地域単位で行う体系的土地登記を待つ方法とは別に、所有者側から申請する個別的な土地登記の方法もあります。

    ただし、必要書類、測量、隣地確認、公告、税金、手数料、審査期間は、物件と地域によって異なります。

    また、外国人はカンボジアの土地を直接所有できません。

    外国人投資家が関係する場合は、次のような点を現地の独立した弁護士へ確認する必要があります。

    • 土地の名義人
    • 名義人と投資家との契約関係
    • カンボジア法人の株主構成
    • 長期賃借権の内容
    • 信託を利用する場合の法的構造
    • 土地や建物に設定する担保
    • 建物部分の所有関係
    • 投資金を回収するための契約

    建築法整備とソフトタイトルの整理がつながる部分

    建設法と土地登記制度は別ですが、実務上は互いに関係します。

    2026年の建築許可手続では、建築内容だけでなく、地籍情報、都市計画、土地利用、住宅政策などを複数部門が確認する流れが明確化されました。

    建物を適法に建てるには、

    「誰の土地なのか」

    「どの区画に建てるのか」

    「どのような用途の建物を建てられる地域なのか」

    という点が明確でなければなりません。

    一方、土地を正式に登記するときも、その土地に建物がある場合は、建築時期、建築許可、建物の評価、税金などが問題になることがあります。

    2026年8月の首相発言では、建築許可がない建物を含む土地の移転において、過去の税金計算が複雑になり、権利証の発行が滞るケースがあることも説明されています。

    政府は権利証発行を促進するため、一定の取引について、過去の複数回の譲渡をすべて遡らず、最終取引を基準に印紙税を扱う緩和策を示しています。

    建物についても、実際の建築年を建築許可や行政機関の証明で確認できる場合は、その時点から税金を計算する考え方が示されています。

    土地登記、建築許可、税務情報が結び付くほど、無許可建築や権利関係の曖昧な物件は、将来の売却やハードタイトル取得で問題が表面化しやすくなります。

    今後ソフトタイトルがなくなる可能性はあるのか

    長期的には、国家レベルの土地登記が全国へ広がり、ソフトタイトルだけで取引される土地は減少していくと考えられます。

    しかし、2027年になった瞬間にソフトタイトルがすべて無効になる、あるいは市場から完全になくなると発表されているわけではありません。

    今後も、次のような土地では整理に時間がかかる可能性があります。

    • 所有者同士の争いがある土地
    • 境界が確定していない土地
    • 相続手続が終わっていない土地
    • 複数のソフトタイトルが存在する土地
    • 過去の売買契約が連続していない土地
    • 売主と書類上の名義人が異なる土地
    • 国有地や公共用地と重なる可能性がある土地
    • 森林、保護区域、道路計画などの規制を受ける土地
    • 税金や手数料が未納になっている土地
    • 無許可建築物が建っている土地

    したがって、ソフトタイトルの将来は、「すべて廃止される」「そのまま残り続ける」という単純な二択ではありません。

    問題のない土地は国家登記へ移行し、問題のある土地は権利、境界、税務、建築許可などの整理が必要になるというのが、より現実的な見方です。

    ソフトタイトル物件の価値は今後どうなるのか

    全国登記が進むと、ハードタイトルを持つ物件と、ソフトタイトルのまま残る物件の評価差が、これまで以上に明確になる可能性があります。

    ハードタイトル化できた物件は、次の面で有利になりやすいと考えられます。

    • 所有者と境界が明確になる
    • 買主が権利確認をしやすくなる
    • 金融機関の担保評価を受けやすくなる
    • 相続や売却を進めやすくなる
    • 二重売買や重複書類のリスクを減らせる
    • 土地利用計画や都市開発との整合を確認しやすくなる

    一方、周辺地域の土地が次々とハードタイトル化されているにもかかわらず、特定の物件だけがソフトタイトルのまま残っている場合は、なぜ登記できないのかを確認する必要があります。

    単に手続が遅れているだけなのか、境界や名義に問題があるのか、国有地との重なりがあるのかによって、物件価値は大きく変わります。

    今後は「ソフトタイトルだから安い」という理由だけで購入するのではなく、「この土地は将来ハードタイトル化できるのか」を確認することが重要になります。

    カンボジア不動産を購入する前に確認すべき土地の書類

    今後、建築制度と土地登記が厳格になることを考えると、価格や利回りだけではなく、土地と建物の適法性を確認することが重要です。

    土地については、最低限、次の内容を確認しましょう。

    • ハードタイトルまたはソフトタイトルの原本
    • 登記上または書類上の名義人
    • 名義人と売主が一致しているか
    • 過去の売買、贈与、相続の経緯
    • 土地の位置、面積、形状
    • 実際の土地と書類に記載された土地が一致しているか
    • 隣地所有者との境界確認
    • 抵当権、差押え、紛争の有無
    • 同じ土地について別の権利書が存在しないか
    • 国有地、公共用地、道路、保護区域との重なり
    • 固定資産税、未利用土地税、印紙税などの状況
    • 体系的土地登記の対象地域になっているか
    • ハードタイトル化を申請できる状態か

    建物について確認すべき許可と資料

    土地のタイトルだけでなく、建物についても次の資料を確認する必要があります。

    • 建築許可証
    • 着工許可証
    • 承認された建築図面
    • 承認された構造図面
    • 施工中の検査記録
    • 建築認証・適合証明
    • 建物完成後の使用許可証
    • 増築、用途変更、改修の許可
    • 消防・防火設備に関する確認資料
    • 建設会社や技術者のライセンス
    • 売買対象となる建物の範囲と所有関係

    書類がない場合は、

    「昔の建物だから普通です」

    「この地域では許可がなくても問題ありません」

    「今まで誰も指摘していません」

    という説明だけで判断しないことが大切です。

    将来、売却、担保設定、建て替え、用途変更、増築、ハードタイトル化などを行うときに、不足書類が大きな問題になる可能性があります。

    日本企業の関与はカンボジア不動産投資にとってプラスか

    日本政府、JICA、日本企業が、建設法、建築確認、品質管理、人材育成に関わることは、カンボジア不動産市場にとって基本的にはプラスです。

    建物の安全基準と検査制度が整えば、適切に建設された物件が評価され、違法建築や品質の低い物件との違いが明確になります。

    土地登記が進めば、誰が所有しているのか、どこまでが対象土地なのかを確認しやすくなります。

    行政手続が明確になれば、日本企業を含む外国企業も、建築や不動産投資のスケジュールと費用を予測しやすくなります。

    しかし、日本が制度整備へ協力しているからといって、日本政府や日本企業がカンボジアのすべての不動産を保証しているわけではありません。

    制度全体が改善していることと、購入しようとしている個別物件が安全であることは、必ず分けて判断してください。

    カンボジアの建築法とソフトタイトルに関するよくある質問

    Q.日本企業がカンボジアの建築法を作っているのですか?

    A.カンボジアの法律を制定するのはカンボジア政府です。日本の国土交通省、JICA、日本企業は、日本の制度や運用経験を共有し、技術協力、人材育成、現場視察、セミナーなどを通じて支援しています。

    Q.2026年に開催された建設法セミナーはどのようなものですか?

    A.2026年9月10日、カンボジア国土管理・都市計画・建設省とURATA(CAMBODIA)が、建設法と建築認証・許可制度への理解を深めるセミナーを共催しました。政府関係者、日本関係機関、建設・不動産関係者など450人を超える人が参加しました。

    Q.ソフトタイトルは2027年に無効になりますか?

    A.2027年にすべてのソフトタイトルが一律に無効になると公表されているわけではありません。政府は2026年末までの測量・登記、2027年末までの権利証配布完了を目指しています。問題のない土地は国家登記へ移行していく一方、紛争や境界問題のある土地は整理に時間がかかる可能性があります。

    Q.ソフトタイトルは自動的にハードタイトルになりますか?

    A.自動的に書き換わるとは限りません。測量、境界確認、権利者確認、書類審査、情報公開、異議申立てへの対応などを経て、国家登記簿へ登録される必要があります。

    Q.ソフトタイトルの物件は購入してはいけませんか?

    A.一律に購入できないわけではありませんが、ハードタイトル物件より慎重な調査が必要です。売主、権利の履歴、境界、重複書類、抵当権、国有地との重なり、税金、将来のハードタイトル化の可能性などを、独立した弁護士と地籍・測量の専門家へ確認してください。

    Q.建築許可があれば土地の権利も安全ですか?

    A.建築許可と土地所有権は別です。建築許可があっても、売主が正式な権利者なのか、土地に抵当権や紛争がないかを別途確認する必要があります。

    Q.ハードタイトルがあれば建物も合法ですか?

    A.ハードタイトルは土地の権利を示すものであり、建物の建築許可や使用許可を自動的に証明するものではありません。土地の権利書と建物の許認可を、それぞれ確認してください。

    Q.外国人はハードタイトルの土地を所有できますか?

    A.カンボジアでは、外国人による土地の直接所有は原則として認められていません。外国人が所有できるのは、原則として法令の条件を満たした共同所有建物の地上階より上にある専有部分などです。

    まとめ|カンボジアは「法律を作る段階」から「制度を運用する段階」へ進んでいます

    カンボジアでは、2019年の建設法制定後、建築許可、建築認証、検査、使用許可、技術基準を実際に運用するための制度整備が進められています。

    日本の国土交通省、JICA、日本企業は、セミナー、意見交換、日本視察、施工現場での研修、建築確認・検査制度の共有などを通じて、長期的にこの取り組みを支援してきました。

    2026年9月にカンボジア政府とURATA(CAMBODIA)が開催した大規模セミナーは、カンボジアの建設法が、法律の存在を周知する段階から、認証・許可制度を実際の現場へ定着させる段階に入っていることを示す出来事です。

    土地についても、カンボジア政府は全国的な測量と登記を加速し、2027年末までの権利証配布完了を目標としています。

    その結果、ソフトタイトルだけで取引される土地は徐々に減り、国家登記されたハードタイトルが取引の中心になっていくと考えられます。

    しかし、ソフトタイトルが一斉に自動変換されるわけではありません。

    境界、名義、紛争、税金、国有地との重なり、建築許可などに問題があれば、登記は簡単には進みません。

    これからのカンボジア不動産では、「土地の権利が正式に登録されているか」と「建物が適法に建築・検査・使用されているか」の両方を確認することが、これまで以上に重要になります。

    制度整備が進むことは、カンボジア不動産市場の透明性を高める大きな前進です。

    同時に、制度が整うほど、書類や許可が不足している物件との差も明確になります。

    カンボジア不動産を購入、保有、売却する場合は、将来の期待だけで判断せず、ハードタイトル、建築許可、使用許可、税務、境界、登記進捗を物件ごとに確認しましょう。

    参考情報

    ※本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成した一般的な解説です。カンボジアの法律、行政実務、税制、登記手続は変更される可能性があります。個別の不動産取引については、売主や仲介会社と利害関係のないカンボジアの弁護士、税務専門家、地籍・測量の専門家へご確認ください。